こんにちは。こんばんは。
突然の雨に雷、カラリと晴れたら30℃を超えたりと厳しい天候の日々ですが、いかがお過ごしでしょうか。
こちらは相変わらずです。例によって間が空いてしまいましたが最近のお仕事等をぽろぽろとお話できたらと思います。
まずはこちらから。前回お届けも完了しておりました16本目のリバースファントム。
1月には動画も制作して投稿しておりましたが記事内では貼っておりませんでしたので。
いつにも増して長い動画時間ではございますが、通常のギター製作では行わない加工もいくつか映像として残しておりますので、気が向きましたらご覧くださいませ。
オーダーではありませんが16本目のオーナー様にはすでに別件のお仕事も頂戴しておりますので、そちらもあんまりお待たせしすぎないよう頑張らないとですね。
で、年明けから16本目の動画も作りつつ、この半年は17、18本目の残りの木工や塗装、組み込みから納品までしておりました。もちろん合間にリペアもしておりましたが、製作業で手一杯なこともあり納期に随分猶予を頂いたり泣く泣くお断りもしたりと色々やっておりました。
さらに今回は難しめのカスタムとして以前14本目として製作しました子もありましたので、今思い返すと冬も中々の作業量でしたね。
ということで、まずはその14本目のカスタムから。
オーナー様からどうしても手を加えて欲しいと。
製作者によっては一度作ったものに大きく手を加えることに抵抗がある方もいるだろうし、オーナーさんもとても申し訳なさそうにお願いしてきてくださって。
ただ事情をきくと、とても大変なことがあって、より近くでこの子を感じたいと思って下さったそうで、内容的にも軽率にここで書いて良いことではないので伏せますが、私にとってはとても他人事ではないその想いを断ることなど出来ませんでしたので、より良く出来るならと受けさせて頂きました。
まぁなんだ。うちの7本目、10本目と自分用の子には遠慮なく自分のソレを反映させまくっているくせに断るとか出来るわけないんですよね。
少し話が逸れてしまいましたが、内容としましてはトップ材のリトップ(キルテッドメイプル→フレイムメイプル)とトップに疑似的なジャーマンカーブの加工を加え、さらにピックガードを新たに製作、ペグ変更(スパーゼルロック式→HIPSHOTオープンギア)、更にトップ一部に木象嵌としてメイプル+バインディングの嵌め込みと塗装時グリーンのラインの追加等です。
作業としては結構難しめですので、中々大変でした。まずリトップからして塗装は必須になってくる加工ですので。
で、一通り完了しましたのがこちら。
基本的にパーツやカラーは変わっていないのに印象はガラリと変わりました。
色味は撮影時の光源の角度などで全く変わってしまうのが中々難しいところなのですが…本当はもう少しバイオレットに寄ってます。
どちらかというとこっちのほうが実際の色味に近いのですが壁掛けで撮るには背景がアレなので。
今回はヘッドも多少変更を加えましたが(ペグ換装や塗装追加等)、
印象はボディのほうが大きく変わっているのでボディ中心の画像でご容赦くださいませ。
映像や画像もそれなりの残しておりますので何らかの形にしてアップしたいなとは考えております。
オーナー様にもご満足いただけてこの子を連れてさっそくイベント等にもご参加されたそうで、大事にしてもらっているようで何より。
最後まで、「気に入らないから作り替えたとか思われないよう、ヒモさんが印象悪くならないようにしてください」とこちらをお気遣い頂いておりましたが、私としてはより大事にしてもらえるよう出来たことの方が嬉しいので。
ということで「改」14号機はここまで。本当はいっぱい画像や加工時のアレコレもありますが、長くなってしまうので別の機会に致します。
で。
ここからはフルオーダー。前回12月時点で木工終盤だった子達。
納品の関係で順番が前後しますがまずは18本目から。
zt-18 Madonna Lilly
バイオリンシェイプが続きましたが本当にたまたまです。
実際現在と今後の予定的に同じようなシェイプはなさそうですので。
この子は15本目の月光と同系統のシェイプです。
ただ大まかなシェイプは月光と同じですが、今回は構成からかなり変更を加えております。
15本目はミディアムスケールのスルーネック(差し角なし)、2ハムザグリですが、
18本目はロングスケールのボルトオンネック、差し角ありのアーチトップ、3P.U.仕様と全然違います。
音的にもこの2本でかなり使い分けができますね。
また15本目がメイプルスルーネック、アルダーウィング、メイプルトップだったのに対して、リリーのほうはメイプルネックにスワンプアッシュボディのみで構成されているので厚さや軽さでかなり差があります。
また15本目のフィードバックを元にボディシェイプの細部やサイズでロングスケールに伴い多少変更も加えております。
塗装もシンプルに白と、ハードウェアやエボニー指板の黒のみです。
個人的に白は塗装時に結構気を使う為苦手でしたので結構頑張りました。
また薄めのボディ材でのアーチトップでしたので、トレモロザグリや各P.U.の位置関係等、細かいところでかなり気をつけて設計してます。
気を付けないとセンターのP90のマウントビス等がバック側のスプリングキャビティに貫通したりするので…。
それにトップ材を使用しないアーチトップだと事前に導線を掘れないので各P.U.の配線穴あけ等も結構難しいんですよね。
あとは個人的に気に入っているのは、ボディとヘッドを黒バインディングにする関係上、どうしてもエボニー指板だけ黒単色のみになってしまってシンプルになりすぎてしまうので、オーナーさんにお許しを頂いて指板に挟んでみた白パーフリング。
これがあるだけで印象が変わるんですよね、製作側の勝手な自己満足ではありますが。
まだこの子のライブデビューはこれからだそうですが、すでに音は聴かせて頂いておりまして、オーナー様もさすがの音作りで作って良かったなぁ思いました。
で。
そんなこんなでこの子を春にお届けして、少し遅れて完成しましたのがこちら。
zt-17 NEON
見た目はシンプルです。
ですがとてもとても大きい子です。
輪郭がES335なだけで完全ソリッドボディですので、そりゃ大きいですよね。
構成としてはロングスケールのデタッチャブルジョイントで使用材はローステッドマホガニーバックにキルテッドメイプルトップ、ネックはメイプルとウェンジの3Pネック(カーボンロッド入り)のメイプル指板、ヘッドはマッチングヘッドにて突板はフレイムメイプルを貼りました。
ボディ材に関しては当初普通のマホガニーバックにメイプルトップをご希望頂いたのですが、まずこのサイズのマホガニーやメイプルが国内では一切手に入らず国外でもほぼ見かけませんでしたので、ちょうど馴染みのショップさんで見つけた大型サイズの珍しいローステッドマホやグレードの低めのキルテッドメイプルをオーナーさんに確認後輸入しました。
普通ソリッドギター用で横幅406㎜以上のボディ材なんてまぁ…そうそうないですよね。
誤算としては、グレードが低いはずのキルトがシースルーにしたら意外なほど杢が出てしまったこと。
予想外ではありましたがオーナーさんには喜んで頂けたのでよかったです。
その他、シンプルな造りにみえてこの子はナチュラルバインディングや当工房オリジナルの手巻きP.U.や指板インレイ等が入っていたりと細かいところで手が込んだ仕様です。
文字インレイはかなり苦戦しました。
CNCで切り抜きましたが、細すぎて何枚かインレイ材折ってしまったし、文字って中々難しいですね。
あと単純に「大きい」というのは難しさに直結するもので、
通常より遥かに横幅があるのもあって製材や貼り合わせの段階が木工では一番難しいところでした。
最初の面出し等の精度が完成度に影響するので尚更。しっかり材が準備出来ればあとは製図通り進めれば良いだけですので。
これは製作に限らずで、どんなお仕事でも準備段階が一番大変なのは同じですよね。
昨年頑張って工房にドラムサンダー導入しておいて良かったとつくづく思いました。
よくある加工幅300㎜台の自動カンナじゃ到底役に立たないサイズでしたし、現在に至るまで大活躍してくれているので。
ただ、全体を通して今回苦戦したのは塗装工程でした。
先の18本目のリリーもそうでしたが厳冬期にウレタンを吹くのはあまり上手くいかず何度かやり直したので。
納品が前後してしまったのも、17本目のこの子のほうが磨く面積もずっと大きいから。特に指板やバックなど後からやり直すことになってしまったので、ウレタン系はもう少し条件等詰めていかなくてはですね。
ただやり直して課題も残ったものの、最後まで足掻いたかいはあったようで弾きやすさや音も大満足頂けたので良かった。
弾きやすさは製作していて特に気を付ける部分なので当たり前ですが、音についても自分で巻いたP.U.を気に入って頂けるともっと嬉しくなったりします。
頑張って良かった。大事にしてもらってね。
17本目と18本目の子達につきましても今後メイキング動画を作る予定です。
本格的な夏がきますと木工や塗装が一旦ストップしてしまうので、その間に新しいオーダーの打ち合わせや設計・発注等の準備をしつつ合間を見て動画も制作したいと思います。
大変ありがたいことに、すでに夏以降のご予約も埋まりつつあるので加工作業が難しい8月も色々とお仕事は出来そうです。
とりあえず今は終盤にきている木工3本を出来る限り進めなくては。
フルオーダー3本同時進行は初ですので中々苦労していますが楽しく作らせて頂いております。
しかも作っているのが、ドロップトップのプレべに7弦スルーネックに8弦PRSシェイプというどの子も難しくないわけがない子達で終盤になっても全然気が抜けない工程ですが…引き続き頑張ってまいりましょ。
前回更新の12月から気づいたらもう半夏生。文月。
また年を、1つ重ねます。
いつの間にか追い越してしまったな。
いつまでも置いてかれてしまったと思ってしまうものだけど。
今年の桜は、ずっとずっと散るのが早かったですね。
あっという間に春が終わって、梅雨が過ぎれば暑い夏。
年々暑くなるのも早くなっておりますので、皆々様も熱中症等お気をつけてお過ごし下さいね。
内容が溜まっていた分長くなってしまった。
今回もここまでお読みくださり誠にありがとうございました。